デザインの話 Feed

2011.08.22

写真植字機

印刷と活字の時代は 目まぐるしく変わっていく

1枚1枚の手作業時代の アナログから 

大量に情報発信できる デジタルに

活版が 樹脂版になり 印刷もどんどん様変わりしていくが

活字を組む側も変わっていく

とりわけスピードが必要な新聞社は 

活版で文字を組み立てていた時と比べて 

今では 数倍楽な仕事になっていると思う

その分 また他の悩みや大変さもあるだろうけど…

時代の流れの中に 写真植字機の時代がある

写真の技術を用いて 印画紙に文字を焼き込む

黒いガラス板に文字が抜けて 反転で並んでいる

部首別に並んでいたと思うが 日本の文字は多く

ガラス版が 機械の横にも控えていた 

それを選んで 文章にしていく

下から光にあてた文字を レンズごしに見ながら

ガラス板をスライドし 目的の文字に焦点を合わせる

カチッ カチッと シャッターを切る

随分昔 デザイナーをする前に

新聞社で数ヶ月程 アルバイトをしたことがある

写真植字機を使って 活字を印画紙に焼き付ける

習いながら仕事したので とても苦労した

初めは 容易いものから作成ということで

新聞の読者欄の下のほう出てた囲碁の図

縦列から 横列にすすんで罫と数字記号を原稿通りに

選びながら シャッターを押していく 

次は1行タイトルの原稿を 渡される

記事の見出しのことである  

原稿が タイトルから文章に変わる

普通に読める文字も 反転となると

1字一句間違わないように 慣れるのに 

毎晩 夢でうなされた

写植を仕事としていた人は 

膨大な文字の山と 種類を知っていて 

反転文字を得意とする 職人である


きょうの一枚


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http://www.e-digigra.com/EP_Webdata/EP5_6.html

2011.08.21

ガリ版刷

印刷やデザインに関わるものにとって

なくてはならないものに 文字がある

情報源として 重要な役割をもつ

この文字を 伝える道具として

時代と共に 工夫され 合理化し便利になる

様々な道具が 手法が 登場していく 

子供の頃に見た文字は 

童話 教科書 新聞 まんが プリントなど

大概は 専門の活版印刷というものだった

文字を1字1字ひろって枠の中に納めて印刷する

印刷の終わった文字盤は バラバラにされる

とりわけ 味のあるのは謄写版

学校では おなじみの通称『ガリ版』

先生が放課後 油紙に鉄筆でガリガリと文字を書く

油紙に格子の線があり 1文字づつ整列させて書ける

油紙に 力を入れすぎると インクが滲みすぎる

書き損ねると 修正液で その部分を穴埋めする

謄写版にインクを乗せ 1枚づつ人数分 刷っていく

先生は 黒い腕抜きをして作業する

教室で 刷られた藁半紙を たぐりながら

前の席のみに 人数分置いていく

前から後ろに1枚づつ 手にしたプリント

刷ったばかりのインクが プーンと匂う

色んな人の 温かい手書きプリントが出来上がる

今は あまりお目にかかる事が少ない

あなろぐ印刷 走馬灯

今日の一枚
 


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http://www.e-digigra.com/DG24Web/DG24IND_IN.html

2011.08.20

熊野の筆

なでしこジャパンが 菅首相から国民栄誉賞を授与され

副賞に 化粧用筆の熊野筆が 贈られた

副賞は100万円相当の物品をとのことで 人数で割ると

ひとり 3万円 『きり箱入りの熊野筆7本セット』

世界に誇れる伝統工芸品の中からと 選ばれたらしい

単純計算すると 1本 4,000円は下らない筆 高価な品

頑張ると こういう物がご褒美として 頂く事が出来る…

今は使用していない 面相筆が 引き出しの中にある

仕事が パソコンに移行してからは

筆から マウスに代わり 手にしなくなった

仕事の内容が そんなに変わらないでも

使う道具ががらりと 様変わりしてしまうとは

考えてもみなかった

ポスターカラー 筆 絵皿 ケント紙  

三角定規 ディバイダー コンパス 

烏口 インク ガラス棒 溝引き ロットリング

あなろぐ道具は もっとあり 色々と使っていた

なかでも グラフィックデザインの制作に

欠かせないのは 筆類

レタリングを書くのに 必要不可欠な存在だった

レタリングだけでなく 細かい線を引く時に

面相筆は ガラス棒と溝引きとセットで 誰もが持っていた

よく使うから 抜けたり ちびたり 穂先が紛失したりと

買い替えなければならない

いつも ちょうどタイミングよく 

熊野から訪れる 面相筆業者というより

出稼ぎのおじちゃんがいた

自分の薄給で購入するのに 少し高く感じていた

手に取って見たものの 黄軸 黒軸 何本購入しようかな

悩みながら 綺麗に引けそうな筆を 数本ほど手に入れる

新品は嬉しいが 制作がスムーズにいくように手にならす

あの頃は 熊野の筆がここまで有名になるとは

思ってもみなかった…

それまで需要があったものが 突然となくなり

新しく開拓していかなければならない時

揺るぎのない軸があれば 立ち直せる

日本の職人気質が つくらせる技法

熊野の伝統工芸は 広島の誇りだ

今日の一枚


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http://www.e-digigra.com/DIGI4_IN.html

2011.08.16

宮島のポスター

毎年 広島では幾つかの花火大会がある

広島湾の花火大会を 筆頭に夏が始まり

尾道 呉 三次 三原 庄原 福山と

そして世界遺産の宮島の鳥居前での花火

この海上からの花火が 打ち上げると 

今年の夏も 終盤に入りお盆を迎え

子供たちの夏休みも 慌ただしくなる

仕事で宮島のポスターの仕事を

何年も受けていた 

といっても 競合であるので 

採用される時も されない時もあり

採用されないと 価格はとれない

原寸大で描くこのポスターを

まずアイデアから充分練って

1〜2点出していた

・ 

観光ポスターのデザインは 

イベントや展示会で出すのと変わらず

同じ要領と エネルギーがいる

パネル張りするから 労力がいる

手書きでポスターカラーで仕上げる

写真を使うとなると 外注して引き延ばして

パネルに貼るが これはコストがグーンと上がる

コストを上げてでも 決めるか イラストでいくか

去年とは 異なる方法で表現しよう

アイデアが決まると 作業は早い 気持ちを入れ込む

後は 採用か否か 結果待ち

採用されないと 

クライアントの好みもあるし…と

慰めの言葉

採用されると 自信につながり

次々と決まって行く

初詣 清盛祭 かき祭 管弦祭 宮島水中花火

全てポスターになった

地元で育ち 地元の仕事が出来て 

とても嬉しい記憶のひとつである

世界遺産になって 世界各地から人が旅する

夏もよし 秋もよし 冬もよし 春もよい

そんな宮島に 簡単に花火を見に行けるのは

幸せだと思う

今日の一枚


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http://www.e-digigra.com/title_page/NEOKIRIE_index.html

2011.08.11

0.1mmの線

パソコンで図面や図解を 作成するにあたり

便利なひとつに ミリ単位の線をひけること

簡単に 線設定を指定すれば 瞬時に表現する

直線・曲線 誰でも作成できる

デジタルは人を選ばない

ある程度パソコンの知識と 

マウスかペンタブレットで ベジェ曲線が使えれば

与えられた仕事は 入社何年あまり関係ない

デザイナーでなく オペレーターの仕事

パソコンのないズッーと前の時代は

0.1mmの線を引くのに 本人の努力がものをいう

烏口(からすぐち)という製図器で 

名前のとおり カラスの口に似ていて

口の中に インクを1〜2滴 入れる

口の上にネジがついていて 幅を調節する

一回で思う幅の線が引けないので

試し引きを何度かして ネジをうまく合わせる

一気に 息を止めて線を引く

途中で話かけられたら 手元がゆるむので

その間 何があっても線引きが終わるまで 待つ

同じ線を同じ幅で何度も引く楽譜や 方眼紙など

1メートル以上の長い線を版下に引く

今で言う 職人技といってもいい

使いすぎると 綺麗な線が引けないので

砥石で磨く これも技がいる

錆びるといけないので丁寧に扱う

線引きは誰でも簡単に出来ない 

訓練の賜物で 時間もかかる 

器用でない人や集中力のない人には出来ない

自分でうまく出来たと思っても

方眼紙の縦横 よくみるとモアレが起きている

微妙に幅がずれている 一発でボツ

時間を また前に戻さないといけない

あなろぐの仕事は人より努力していたら

歴然と差が出て 仕事でそれが見えてた

自分への 自身にもつながっていた

烏口からペリカンペン・ロットリングよりパソコンへ

いま 0.1mmは私が引かなくても…

今日の一枚


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http://www.e-digigra.com/DG11CA_M.html