赤いスイカ
スーパーの食品売り場で スイカが出始めた
初物として ずらり六つ切りが並ぶ
まだ丸玉のままは 時期尚早なのだか
確実に夏が すぐそこまでやってきた
赤いスイカを見るたびに 父を思う
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小学生の頃 夏の田舎暮らし
クーラーもない 団扇と蚊帳の生活
蝉の鳴く音と カエルの声が追い打ちをかける
暑くて 汗で髪がぬれネズミのようで
夏休みの宿題をして 過ごす毎日
期待している訳でもないが
街の中心とか 遊園地とか
どこかに連れて行ってくれるでもなく
まいにち 毎日 暑い日を過ごす
たまに 田んぼの近くの川で水遊び
ボチャボチャ 唯一冷たいひととき
父は休みのない仕事で 朝から夕方まで
汗をかきかき 仕事をこなしていたので
子ども心に 最初から行楽など
期待してはいなかった …
ある夕方
父が 家から少し離れた崖下の方から
両手で大きなスイカを抱えて 上がってきた
『わぁ~ すごい!』目がランランしてきた
まな板の上で ぱっくり切られ
くし形にされたスイカを 『ほ〜れ』
冷や冷やの あまく涼しい味だった
それは 大っきな おいし~い つめた~い
本で見るスイカのイメージ そのままだったが…
成長するに従って 店の赤いスイカを見ると思い出す
多忙な父が 仕事の合間にスイカの丸玉を買ってきて
他所の井戸で 冷やしてくれたのだった
そんな気持ちなど 知らない子どもは
万遍の笑顔で スイカをかぶった
『おいしいか』 父が笑う
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今日の一枚(おいしいね)
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