日本の原風景
日本百選の棚田【井仁の棚田】
10年前に初めて行って以来 またその後
幾度となく訪れているが
その度に いつも心が落ち着くのが分かる
日本には まだこういう風景が残っている
もう随分 昔に開墾されていて
歴史を感じる 棚田の積まれた石垣と 住まいの佇まい
今は田んぼも休みであるが もうすぐ耕されて
水を張った中に 稲の苗が並ぶ
段々の田んぼで 青い稲が活き活きとして育ち
やがて黄色い稲穂が 垂れてくる
四季折々の顔を持つ 棚田の風景は
平地の田んぼに比べ どんなに苦労が多いことか
計り知れない 高齢になると もっと
昔からの知恵で 水を上から引いて水路をつくり
自然に流れてくるように 作られている
必要な分だけ入り口を開け 次の田んぼに水を譲る
農家の屋根は 形こそ藁葺き家の形をしているが
時代の流れで もう藁自体を作るところも
藁葺き屋根にする所も 滅多にお目に掛かれない
でも この形は農家そのものの名残りで
家の作り 間取りなどはそのままだ
こういう家に 故郷に帰郷できたら言う事ない
夕方になると 庭で今日の垢を煙にするのだろうか
囲炉裏で あったかい鍋が 待っているのだろうか
もう随分前に 休校になっている小学校
運動場から眺めていると
教室の中から 子供の声が聞こえたような…
小さな運動場ではあるけれど
ここで 精一杯学んで 遊んで 走った子らは
今は 大人になり 土地を離れ
また 昔を思い出して帰郷してくる
ふたたび
生活の一部だった このトンネルを通って…